日本武道館発行の単行本
剣道の文化誌
剣道の持つ文化としての多様な面を、時代を追いながら、わかりやすく紹介。剣道を愛好する方には剣道を改めて見直すきっかけとして、剣道をあまりご存じない方には、剣道という日本文化の成り立ちを知るガイドとしてごー読を。
四六判・上製・480頁
2,640円
- 内容
目次
- 第1章 剣道のはじまり ―「剣」と「刀」をめぐって―
- はじめに/「剣道」のはじまりはいつか/「剣」と「刀」をめぐって/「剣道」という呼称はいつからか/剣術の発生
- 第2章 剣道の源流 ―剣術流派の発生と台頭、三源流と現代剣道―
- 軍記物語等に見られる戦技の変化/剣術流派の発生/鹿島・香取に由緒を持つ新當流・神道流/中條流――一刀流へとつながる鎌倉武士の剣術/陰流――新陰流系統の始祖/補遺として
- 第3章 上泉信綱の事績・功績と「しない」の創案
- 上泉信綱(秀綱)の事績/上泉信綱(秀綱)が学び、創り、伝えたもの/「しない」の創案とその意義
- 第4章 「しない」の継承と普及 ―疋田景兼「廻国記」の検討―
- 疋田景兼(豊五郎)の事績/木刀・棒・杖の記述から見た当時の試合/相手のシナエに関する記述から/打撃の部位に関する記述から/乱世の剣術から治世の剣術へ
- 第5章 無刀・しないの本意と治世の剣の確立
- 上泉信綱と柳生宗厳(石舟斎)/「無刀」の工夫とその本意/柳生新陰流の発展・継承/『兵法家伝書』の成立とその内容/殺人刀・活人剣思想の展開/しない使用の真意と治世の剣術の確立
- 第6章 宮本武蔵と『五輪書』
- 宮本武蔵の事績について/『五輪書』について/『五輪書』の内容とその意義/『五輪書』の広がり/古代から近世初期までのまとめ
- 第7章 剣術道具の改良と試合稽古
- 直心影流における剣道道具の改良/一刀流中西派における試合稽古/1700年代後期における試合稽古/各流派独自の道具と稽古法/打突の部位、および槍術との関係
- 第8章 しない打込稽古の発展と地域での展開
- 1700年代の時代相としない打込稽古の発達/剣術用具の変遷と槍術用具との関係/袋しないの種類/地域におけるしない打込稽古の展開―熊本藩・雲弘流の事例/相打合体を至極とする、しない打込稽古法
- 第9章 廻国修行の復活としない打込稽古の広がり
- 廻国修行復活の機運/神道無念流における廻国修行/神道無念流の刀・木刀/試合稽古の広がり/試合・稽古の場所/長期・広範囲の廻国修行を可能にした要因
- 第10章 武士教育における道具着用稽古の奨励
- 武士教育における武芸古法復活の奨励/白河藩主としての松平定信の武芸奨励/津山藩における武芸奨励策/道具着用稽古奨励の背景
- 第11章 大石進種次の事績と槍術との関係
- 化政期における他流試合・廻国修行の活性化/大石種次(進)の事績と槍術との関係/大石騒動の背景
- 第12章 他流研究の活発化
- 武藤七之介(彌太夫)について/『神道無念流剣術心得書』の構成と成立年代/「諸流試合口」の特徴/「諸流試合口」にみられる剣術諸事項の検討/近世中期から天保期までのまとめ
- 第13章 撃剣の集大成
- 「撃剣」という術語の整理/千葉周作の事績/「剣術六十八手」の成立/撃剣独自の技術形成/今日につながる稽古法/撃剣集大成の副産物
- 第14章 撃剣実用論
- 実用論からの長竹刀・片手突き批判/水戸藩における撃剣のはじまり/藩主徳川斉昭による撃剣公覧/徳川斉昭の撃剣厚遇
- 第15章 幕府「講武所」と男谷信友
- 講武所の位置づけ/講武所設立の建言/講武所の創建計画と開場までの準備/講武所の開場と竹刀の長さの制限/講武所の移転とその終焉/小川町講武所での新科目と新規則/男谷信友にみる平山行蔵の影響
- 第16章 幕末期における撃剣・剣術の諸相
- 廻国修行の公認と共通化・制度化/撃剣廻国修行・他流試合の実際/廻国修行者への対応と撃剣への距離感/撃剣道具の改良
- 第17章 明治初期の剣術と撃剣興行
- 廃藩置県までの藩校での剣術/明治初期関東郷村部における剣術の事例/関東郷村部における撃剣隆盛と渋沢栄一/撃剣興行の背景と計画/撃剣興行の開催と顛末・余話/撃剣興行が遺したもの
- 第18章 剣術・武術の復権と撃剣批判
- 明治中期頃までの剣術・撃剣の概観/抜刀隊の活躍と警視庁における剣術・武術/実戦経験からの剣術・武術論/隈元實道『武道教範』の記述からみえるもの
- 第19章 山岡鉄舟の影響、および武徳会の設立
- 山岡鉄舟の事績と剣・禅修行/鉄舟の教えと誓願立切稽古/大日本武徳会創設の経緯/幕末から明治中期までの剣術・撃剣のまとめ
- 第20章 大日本武徳会の発展
- 武徳会の組織的発展/武術家の表彰と称号段位制度の整備/武術教員養成所の開設/養成所の稽古/大日本武徳会剣術形の制定
- 第21章 剣道の正課編入と剣道形の制定
- 武術の学校正課編入への胎動/武術体操/正課編入請願運動/文部省第1回武術講習会/剣道形制定までの経緯/大日本帝国剣道形の制定とその後/「入身」についての私見
- 第22章 「剣道」の定着、団体教授法、学生剣道
- 「剣道」定着の底流/文部省第1回武術講習会における永井道明の講義/西久保弘道による「道」の主唱/団体教授法の研究・工夫/剣道の裾野の広がりと学生剣道の存在感
- 第23章 競技としての隆盛、戦時下の剣道
- 学生剣道の隆盛から昭和天覧試合まで/試合形式・規則の整備/競技的技術の承認とその背景/戦時下の武道・剣道
- 第24章 戦後の復活と発展、剣道の将来
- 第2次世界大戦の終結と武道・剣道への禁圧/剣道の継続努力/撓競技/「剣道」の復活/復活後の剣道の発展・整備/近年の動向/剣道の国際的展開と課題/おわりに 剣道という文化の特色