武道の振興・普及

鳥取県(鳥取市)地域社会柔道指導者研修会

日程 平成27年11月7日(土)・8日(日)
会場 鳥取市武道館
参加者 1日目25名、2日目53名
(うち10名が中学校・高校の教員。柔道を専門としない中学校保体科教諭は2名)
中央講師 鮫島 元成 八段 講道館道場指導部長、全日本柔道連盟教育普及委員会特別委員
中西美智子 六段 直心館中西道場MPC、国際柔道連盟審判員(コンチネンタル)
地元講師 前田 秀司 六段 鳥取県柔道連盟、鳥取市武道館館長
林  達雄 五段 鳥取県柔道連盟

概要

 鳥取県で柔道指導者研修会が中学校武道必修に特化した内容で開催されるのは今回で5回目である。
 1日目は、中学校武道必修に特化した研修内容とし、初めに鳥取県教育委員会事務局 吉田朋幸課長から「中学校武道必修化のねらいと課題」「学校における武道の変遷」について講義があった。その後、鮫島講師が、帯の結び方、柔道衣の着用、礼法、体捌き、受け身、投げ技(体落とし、膝車、大外刈り、大腰)、固め技を基本から段階的に指導した。また、参加者に『柔道授業づくり教本』『柔道の安全指導』等の資料を無償配布した。
 2日目は、国際柔道連盟審判規定の変更点を中心に、中西講師が規定の解説、解釈、少年大会申し合わせ事項について資料を基に研修を行った。その後、Aライセンス試験の映像を視聴しながら参加者に判定とその根拠を答えさせながら解説を行った。最後に実技研修として参加者が主審、副審、ジュリー(審判委員)、対戦選手の役割分担を行い、実際に「待て」「始め」の宣告、場内・外の判定、反則の適用等について学んだ。

◆研修内容
【1日目】
鮫島講師が柔道を専門としない参加者にあわせて、中学校体育授業での指導法について、全日本柔道連盟作成『柔道授業づくり教本』の内容に則した研修が行われた。鮫島講師の提唱する「安全で楽しく効果的な指導」を目指し、「全力でも7割、残り3割は周りを見る」、「受身をとる余裕、とらせる余裕」、「投げた面白さ、投げられた痛みの相殺」など初心者にも分かりやすい言葉で丁寧に指導がなされた。

○柔道衣の着用:下ばきの穿き方(前後の向き)、帯の結び方。

○礼法:座礼は、背中と頭が水平になるように体をたおす。手は「ハ」の字。
立礼は約4秒間で、相手に対して15~20度、相手がいないときは30度で行う。
正座する際は両足の親指が重なるように座る。

◯体さばき:前さばき、後ろさばき、前回りさばき、後ろ回りさばき

○受け身(横転受け身、前受け身、後ろ受け身、横受け身)
寝た状態→長座→蹲踞→立った状態→のように低い姿勢から高い姿勢へ段階的に指導した。
応用として八方転び(360度様々な方向に転ぶ)を紹介した。

◯安全な受け身をとるための3つのポイント
①残心(倒れること無く、引き手を離さず、釣り手を相手の手首にひっかけ引き上げる)
②潔さ(相手の技に対して潔く倒れる。受け身の最後の姿勢を確認する)
③命綱(投げるとき引き手を離さない)の3点を確認しながら指導する。

○投げ技
①体落とし(静止した状態から→前に進みながら→後ろに進みながら技をかける。
受は横転受け身。受は取の右足を踏み越え取の両足の間につくようにする)
②膝車(右足は受の両足の延長線上のほぼ中間の位置。左足裏で受の右膝頭を押す)
③大外刈り(刈りながらバランスを維持する練習:シーソー)
④大腰(最初に取は受をおんぶして相手を腰に乗せるイメージをつかむ)

○固め技:抑えこみの3要件
①相手をだいたい仰向けにする。
②相手の上でおおむね向かい合った形になる。
③相手から束縛を受けていない(自由を奪われていない)。
→横四方固め系、けさ固め系の練習。自由練習の中で攻防を楽しむ。

【2日目】
IJF審判規定の解説、解釈を中西講師が説明した。
◯有効の定義:選手が相手をコントロールして投げて体の上部側面が着地した場合は「有効」とする。体の上部側面と定義されているため、下半身が側面であろうが、うつぶせ状態であろうが、上部側面がはっきりと畳に着いた場合は「有効」とする。
※ブリッジの姿勢で着地した場合はすべて「一本」とみなされる。頭が畳について、足がつく前に頭が離れたとしてもブリッジとみなす(一本)。
◯指導を与える際には開始線に戻らないでその場で与える。選手は少し位置を変えることは可能だが、今までのように歩いて呼吸を整えたりすることはできない。場外に出て指導が与えられる場合は、開始線に戻る。
◯相手を押して場外に出した場合、押した選手に指導が与えられる(押しているだけで攻撃をしていない場合)。肘が伸びているかが見極めるポイント。
◯後ろ襟(奥襟)をもってプレッシャーのみを与える場合は指導。奥襟を持たれている選手が姿勢を起こそうとしているかがポイント。
◯「後袈裟固め」の状態が相手の反撃によって顔や胸が天井側に向く、あるいは脚の位置が変わった場合「とけた」としていたが、コントロールしていることに変わりはないので「抑えこみ」は継続させる。
◯反則の適用:罰則を与えるタイミングを考える。機械的に与えるのではなく、技をかけるタイミングを狙っている場合は攻防を継続させ様子を見る。見極めが大切である。安易に両者に与えない。反則を与えるによって試合が動くことが多い。審判団のなかで反則を与えるペースを事前に確認し、平均化しておく。
「組まない、組むふりをする、組ませない」をさせないのが審判の役割。
◯ベアハグ(組手を持たず相手の選手に直接抱きついて投げる行為)は1回目から「指導」。
◯少年大会申し合わせ事項:後ろ襟、または背部を握るのは、技を施すために瞬間的に(1~2秒程度)であれば認められる。試合者が後ろ襟を握った後、その襟を引き下げ側頸部にずらした場合でも反則とする。
◯両膝を最初から畳について背負投を施すことは「指導」。

◆参加者感想
・マンツーマンの丁寧なご指導で分かるまで何度もご指導頂きました。持ち帰って授業に活かしていきます。(中学・保体・剣道)
・柔道を行うのが初めてだったので、やることすべてが研修になりました。指導する立場としてもっと勉強していきたいという気持ちになりました。(中学・保体・陸上)
・大変わかりやすい指導で、なぜそのような動きになっているのか、どう考えていけば良いのか分かった。知識がストンと自分の中に入って理解することができた。(中学・他教科)

●平成26年度鳥取県武道実施状況(74校)
柔道46校(62.2%)、剣道23校(31.1%)
相撲 1校( 1.4%)、空手道2校( 2.7%)
鳥取県内では米子市では柔道実施率が高く、鳥取市に近いほうが剣道実施率高くなる傾向。

●鳥取県外部指導者派遣状況
柔道3校、剣道3校、相撲1校

柔道衣の着用について学ぶ

受け身(あごを引き後頭部を畳につけない)

前回り受け身の練習

体落とし

膝車(左足裏で右膝頭を押す)

大外刈り(シーソー)

大腰(腰に乗せることを意識)

袈裟固めからの攻防

Aライセンス試験の映像で研修

主審・副審・ジュリー・選手に分かれて模擬審判