武道の振興・普及

兵庫県(姫路市)地域社会剣道指導者研修会

期間 平成26年8月13日(水)・14日(木)
場所 兵庫県立武道館(兵庫県姫路市)
参加者 計22名(中学校保健体育課教職員。うち段位・級位を持たない剣道初心者は12名)
派遣講師 上垣功教士八段(全日本剣道連盟推薦・奈良県剣道連盟副会長)、
神崎浩教士八段(全日本剣道連盟推薦・大阪体育大学教授)

概要

 8月13日(水)・14日(木)の2日間にわたり、兵庫県姫路市の兵庫県立武道館において、中学校武道必修に特化した剣道指導者研修会が開催され、主催した県教育委員会・体育保健課の土井一弥指導主事や森鼻崇文氏らが立ち会い、兵庫県立武道館と兵庫県学校剣道連盟の協力・支援の下、22名の中学校保健体育課教員が参加して実施された。
 研修会は、全日本剣道連盟推薦の上垣功講師と神崎浩講師の指導により、全日本剣道連盟発行「剣道授業の展開」(参加者に無償配布)に基づき、中学校の保健体育授業での剣道指導法について、段階的に研修を行った。

 

 開会式では、主催者(日本武道館、兵庫県教育委員会、兵庫県立武道館)の挨拶に続き、講師を代表して上垣講師から、「剣道の授業では、単なる技術の指導に終わらず、剣道ならではの、相手に対する礼儀や思いやり、相手を打ち、自分を打たせることにより、身体で痛みを感じ取るという特性を活かした、人間の豊かさを育む授業にしていただきたい」と挨拶があった。
 研修は、上垣講師と神崎講師が交互に指導を行い、剣道の基本知識や特性などの講義から、段階的に基本動作(所作)、基本打突(木刀→竹刀)、剣道具の着用や取扱い、剣道具を着用して相手を実際に打つ基本打突、連続技や、払い技、応じ技の習得と進められ、最後に二人組で自由に相手と打ち合う稽古を行った。

■1日目(8/13)内容
①講義(武道の授業で剣道が導入された経緯、剣道を学ぶ意義、剣道の特性、剣道の歴史的背景、
 刀剣・木刀・竹刀の歴史的変遷)。
②基本的な所作(姿勢、目付、立礼、座礼、正座、立ち方、座り方)。
③剣道の要素を取り入れた体ほぐし運動。
 (気合を発して行う剣道じゃんけん、二人組での足捌きなど)。
④基本動作(姿勢、足の位置、足捌き、竹刀の構え方や収め方、蹲踞、構え、素振り、打突動作)。
⑤剣道指導時の留意点。
⑥刀や木刀、竹刀の部位(物打ち、峰、鎬、柄、など)の解説。
⑦「木刀による剣道基本技稽古法」による基本技(一本打ち、連続打ち、払い技など)の習得。
⑧竹刀を用いて、「踏み込み足」で、相手を打つ基本打突の習得。
⑨剣道具(面、胴、垂、小手、面手拭)の扱い方。
⑩面手拭の被り方。
⑪竹刀で相手を打つ練習(打たれる側に配慮して、初めは軽く打つ)。
⑫「木刀による剣道基本技稽古法」に沿って、竹刀で相手を打つ。

■2日目(8/14)内容
⑬「木刀による剣道基本技稽古法」(前日の復習)。
⑭各種素振りの練習(上下素振り、斜め上下素振り、正面素振り、左右面素振りなど)。
⑮剣道具の着装(前日の復習)。
⑯基本打突(面、小手、胴、連続技、応じ技)。
⑰4人一組で技の出来栄えを評価しあう、簡易な試合の進め方。
⑱習得した技を使い、自由に相手に打突する自由稽古。
⑲剣道具の片付け方。

 最後に、まとめとして上垣講師が、「剣道具を着用して稽古をすると、相当汗をかくし、実際に打ち合うと、剣道ならではの気持ち良さがある。打たれる痛みを知ることは、剣道ならではの貴重な経験である。剣道の授業で、豊かな人間性を育むことができるよう工夫してください」と述べて研修を締めくくった。
 閉会式では、講師を代表して、神崎講師から「研修で学んだ内容は、『剣道授業の展開』にも収録されている。剣道の授業は、剣道具の取扱や所作など、細かい部分があるため難しいが、その分得るものも大きい。一足跳びに上達できることではないが、最初は下手であっても、先人達が経験してきたことを学ぶことが重要である。生徒に自分を打たせることができるのは、剣道の醍醐味の一つである。先生方の現場での工夫を紹介していきたいので、皆さんも一層工夫と研鑽を積まれるよう願います。」と講評が述べられて、研修会を終了した。

 

参加者からは、
「経験者の方と組んで練習できたので、細かい部分を直していただけた。剣道は全く未経験だったので、うまくできたときに、ほめてもらえると嬉しいと率直に感じた。自分が指導するときも、できたときはきちんと褒めるようにしたい。実際に相手を打つのは面白かったが、そこに至るまでの基本を習得する段階で、反復練習が続くため、どうやって楽しく学んでもらえるか、工夫する必要を感じた(女性教員・未経験者)。
「一度も経験したことがなかったので、剣道の歴史的背景を含めて、基本動作や指導方法を知ることができて勉強になりました。最後の自由な打ち合いで、やみくもに打つだけになってしまったので、どのように相手の動きを見たらよいのか、試合などでの心構えなども学ぶ必要があるかと思いました」(男性教員・未経験者)といった感想が聞かれた。

相手に合わせてすり足で動く

剣道の動きの要素を使った体ほぐし運動
(手押しずもう)

剣道の要素を取り入れた体ほぐし運動
(剣道じゃんけん)

傘を差すように木刀を握る

木刀による基本打ち

「木刀による剣道基本技稽古法」で
基本打突を習得する

剣道具を着ける

面手拭の被り方

剣道具を着用して実際に相手を打つ

木刀と同じように竹刀を振る

4人一組で技の出来栄えを評価する簡易試合

自由に相手に向かって打突する稽古