武道の振興・普及

山口県(山口市)地域社会柔道指導者研修会

期間 平成24年11月1日(木) 1日開催
場所 山口県スポーツ文化センター武道館(山口市維新公園4-1-1)
参加者 35名

参加者内訳

柔 道
保体科(内有段・級者) 他教科(内有段・級者)
男子
女子
男子
女子
中学校教員(公立)
22(11) 6(0) 28(11)
中学校教員(私立)
1(0) 1(0)
その他教員
3(2) 1(0) 4(2)
外部指導者(公立中)
2(2) 2(2)
28(15) 7(0) 35(15)

派遣講師
浅野哲男(公財)全日本柔道連盟教育普及委員会副委員長
向井幹博(公財)全日本柔道連盟教育普及委員会委員

概要

 山口県ではこの必修化に特化した内容を、22年度柔道、23年度剣道で行い、今年度再び柔道を実施した。
 同県では夏前に「武道」の授業を行う学校に対し参加を義務付けた悉皆研修を行ったため、本会はやや少なめの参加となった(22年度は54人)が、県教委の全面協力を得たこともあってほぼ全員が中学校保体科教員で、既に指導校も決まっている外部指導者も2人参加、また白帯もまばゆい女子教員も数名参加し元気に実技に加わっていた。
 講師両名とも従来の指導法から一連の動作を更に細かい段階(部分)に分け、各段階の動作、注意点、説明の仕方などに言及しながら、きめ細かい指導法を伝授した。受け身も、仰向けに寝た体勢で畳の叩き方の強度を変えて叩かせる、叩いた後反動で手を上げる、そのまま畳につけるなど動作を変えて行わせ、受け身という動作に馴れさせると共にその持っている重要な意味を理解させるなど、具体的・現実的指導法を教えた。
 参加の半数弱が有段者とあって、その習熟度に合わせ帯で色分けをし、指導効果と安全配慮を狙ったが、この方法は生徒にも同様の効果があることを示した。
 座学を含め午前中は浅野講師、午後は向井講師が中心となって行った。
 冒頭1時間は、浅野講師による「柔道の安全指導)」講義。
 講師は、パワーポイントを紙に打ち出した印刷資料を中心に、「柔道の安全指導」(全柔連 2011年6月第三版)も用いながら、まず現在の柔道及び柔道事故に対するマスコミの取り上げ方、それによる世情の変化と目下の状況、国の対応などから話を始め、その中でいま指導者に求められていること、注意を払わなければならないことについて、精神や心構えから、具体的・日常的対策の詳細に至るまでを語った。講師は事故の具体例を挙げながら、指導者に課せられた安全配慮義務、危険予見義務、危険回避義務、ハインリッヒの法則の考え方、頭部外傷の現状や実際、加速損傷のメカニズム、衝撃を受けたあとの脳の状態、セカンド・インパクト、全柔連の取り組み等々について説明し、続く実技でも随所に、動作の終端「目は臍を見る(頭を起こさせる)」、引き手は絶対離さないなど適宜注意を挟んだ。
 頭部受傷の主要な原因である大外刈りや大内刈りなど相手を後ろへ倒す技に対し、最初に後ろ受け身を習う筈なのになぜケガが起きるのか、ここにヒントがあるとして実技につないだ。
 実技では、帯の正しい締め方とその意味、狭い学校道場での他人との距離の取り方とその逐次の指摘、柔道に必要な身体能力、特に選手にも欠けていると言われる敏捷性を身につけるための補強運動や体ほぐし運動を全員で実習した。
 後ろ受け身の指導では、まず1人が仰向けに寝てもう1人がその頭を支え、頭の重さとそれを支える首の筋力が如何に要求されるかを実感させることから始めた。次に最初は1人で、いわゆる「体育座り」の姿勢から前後に「揺り籠」して受け身、次にしゃがんだ姿勢から、かかとを付き、尻を付いて受け身、2人1組で次第に高さを変えながらと、段階的指導法を展開した。
 向井講師は初めに、外部指導者のための指導書と既刊「授業づくり教本」に盛り込めなかった詳細を扱った指導書2種が現在作成中であると紹介した。
 「今日は指導者に柔道の面白さを知って貰うための講習を行います。まず先生に柔道の面白さを知って貰わないと生徒たちは付いて来ません」と前置きし、普段少年を指導している豊富な経験から、技の体捌きに繋がる体ほぐし運動、動作に必要な基礎的筋力や運動能力を鍛える補助運動を紹介した。四つん這いで前進後退し手首、肘、肩の筋力強化、それらの神経の連係促進を狙った「アニマル」、四つん這いで両足を揃え、前方に跳び込む「カエル」、仰向けで両手両足を付き、お尻を挙げて移動する「クモ」など。また大腰に入る姿勢づくりのため、両足を肩幅に揃え少しつま先立ってジャンプする、背負い投げに入る姿勢安定強化のため、前進後退しながらジャンプし空中で体を反転させるなど。
 横受け身でも、従来横に移動しながら、右手―右足、左手―左足と同じ方の手足を挙げて行っていたが、技の攻防の中ではむしろ逆つまり右手―左足、左手―右足を使うことが多いと前置きし、2人1組の相対動作の中で1人は受け身を取り、もう1人は技へ発展していく様に動作した。
 柔道の理合も、例えば2人相対で1人が暴漢になって拳を突き出し、もう1人は体を横に捌いて凌ぎ、暴漢が腕を伸ばし切ってバランスを崩した状態が、所謂「崩し」であると、何気ない動作を使って説明した。投げ技でも同様に、受ける方が膝まづいた体勢から膝車、体落としも受ける方が一旦相手の前に足を置きそれから投げられ受け身を取る、背負い投げなど担ぐ技も2人向かい合い、倒れてくる相手に合わせ体を反転し、おんぶすることから始めるなどの段階指導に徹した。午後の後半は固め技を行い、けさ固め、横四方固め、上四方固めを説明した。
 質疑応答では「男女共修の場合、男女で教える技を変えるべきか」「試合はどこまでやってよいか」「自校には廃校の払下げ畳しかなく、マットと併用したいが構わないか」などの質問が出た。
 参加者の声:

  男子
 「専門はサッカー。中高一貫校で教えているので、高校の先生にTTで教えて貰っていま すが、年輩なので自分でも教えられるように参加しました。自校には帯しかないのでそれでやっています。」
 「専門は野球。柔道授業は10月から始め、現在真っ最中です。段階的指導法はやはりいいですね。生徒も楽しんでいるのでこの成果をぜひ生かしたいです。」
 「専門は陸上。以前の勤務校で試合まで行いましたが、ケガが多かったです。段階的指導法や安全に対する考え方が勉強になりました。」
  女子
 「専門は球技。指導法は凄く参考になりますが、完成形がどこなのか判らないので示して貰えると有難いと思いました。」 
 「学校の規模から保体教員は私しかいないので来ました。直ぐに生かせる内容だったので良かったです。」