兵庫県(姫路市)地域社会(剣道・なぎなた)指導者研修会
期間 | 【剣道】平成22年1月29日(土)・30日(日) 【なぎなた】平成22年1月29日(土) |
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場所 | 【剣道】兵庫県立武道館 研修室4、第2道場A・B(29日)、第1道場(30日) 【なぎなた】兵庫県立武道館 第2道場C |
参加者 | 【剣道】66名 【なぎなた】66名 |
中央講師 | 【剣道】佐藤義則範士八段、軽米満世教士七段 【なぎなた】砂川邦子範士、一川治子教士 |
地元講師 | 【剣道】村崎和幸教士七段、阿部始郎教士七段 【なぎなた】成田登代子教士 |
概要
【剣道】
研修会初日、軽米講師の講話は、「我々指導者には中学校保健体育における武道必修化に大きな責任がある」との一言から始まった。武道必修化の経緯を教育基本法改正から諄々と説明した後、全国中学校の現状などについて具体的に述べられた。佐藤講師の講話では、我が国特有の伝統文化であることを理解させるため、授業の導入部分で楽しい動機付けをする前に具体的でわかりやすい剣道史の講義をしてほしい旨説明があった。
講話終了後、会場を道場に移し実技研修が行われた。楽しい動機付けとなる遊びでは、日常的なゲームから随所に剣道の要素を取り入れ段階的に理解させる工夫がされていた。最後に、佐藤講師より常に対人で行うこと、集中できる授業づくりを行うことを注意点として述べられ、午前中の日程が終了した。
午後は、軽米講師が新聞紙を丸めて作る「新聞刀」の作成方法が指導され、竹刀や木刀のない中学校でも、新聞刀を使って間合いや打突部位の確認・手の内の作用などを学習でき、「床さえあれば剣道授業はできる」と強調した。続いて空間打突が行われた。礼法については、「相手を尊重し、伝統的な行動を理解すること」が留意点として挙げられた。
休憩を挟んだ後、竹刀による基本打突の実践に移った。基本打突の稽古法は、用具の普及率の低い木刀による剣道基本技稽古法の代案となる剣道授業指導法で、竹刀では木刀にはない打突の感触を体感することができ、より生徒達を惹きこむ授業が行える。また、主な注意点としては、竹刀の安全点検を怠らないこと、竹刀を打たせる側は竹刀を体の外側に構えさせる方が好ましいなど安全指導の説明も行われた。
2日目の佐藤講師による講話は全日本剣道連盟発行『剣道授業の展開』の活用法が取り上げられた。学校授業ではこの内容にとらわれず、生徒や学校、地域の実情に合わせて指導するようにとアドバイスがあった。また、わかりやすいメニューを作り、授業の流れを明確にし、欲張った授業づくりをしないよう注意を呼び掛けた。
防具がない場合を想定して行われた実技研修は、元立ち・掛かり手・審判の3人一組でグループ分けし、打突部位を決めて順番に手刀、竹刀、木刀でそれぞれ打ち合った。判定基準はなるべく少なく、明解であることとし、打突部位が的確に打てているか、大きな発声ができているかの2点のみが提示され、混乱なく試合が進むような工夫がされていた。佐藤講師より、この実技指導は緊張感を持って取り組め、お互いを高め合うことができるため、試合終了後には必ずグループごとにミーティングを行わせ、お互いの意見交換をさせて、生徒同士が評価し合うことが重要であるとの説明があった。
午後は防具を着装した場合の授業を想定して研修会が行われた。着装に関しては生徒たちにより理解を深めてもらうため、歴史的背景を説明しながら行い、必要に応じてペアで確認して行う方法が推奨された。4人のグループ学習として最後に行った基本打突で行うポイント制の試合は、繰り出す技を生徒間で話し合って決めさせ、45秒間で何本有効打突が取れるかを競う形式のものであった。佐藤講師より、審判が判定を「メンあり」「ドウあり」などと発声することで試合者は自身の長所・短所を認知でき学習意欲が向上するので、審判役の生徒も重要な役割を持っていると自覚できる。グループ学習では生徒間の自主的な活動を残すことが非常に重要であるとの説明があった。
閉講式で佐藤講師は、日本武道協議会で決めた「礼」の実践について取り上げ、「剣道は礼に始まり、礼を尽くして、礼に終わる」という言葉を挙げ、本研修会の指導法を平成24年度に完全実施される中学校武道必修化や、日常生活、部活動を通じて中学生の人間形成に活かしてほしいと述べた。
以上をもって2日間にわたる研修会は充実のうちに終了した。
【なぎなた】
本研修会は中学校武道必修化に特化した事業のため、宮川祥子全日本なぎなた連盟会長も会場に駆け付け、あいさつを述べた。中央講師として参加した砂川講師は昨年12月25日・26日、千葉県勝浦市にある日本武道館研修センターで行われた第1回中学校武道授業(なぎなた)指導法研究事業に参加した。その事業で確認した内容を今回の研修会で早速活かすこととなった。 開会式後に行われた砂川講師の講義は、初めてなぎなたを持つ生徒への指導注意点をもとに進められた。
- ・ 指導者の持つ知識や技術を生徒に無理に詰め込まず、ポイントを指導すること。
- ・ 礼法を取り入れた「武道」なぎなたを指導すること。
- ・ 連盟発行の「楽しいなぎなたの授業 指導の手引」などを用い、現場の状況に応じた指導をすること。
- ・ 教育の場であっても連盟の指導方針・理念に則ったなぎなたを指導すること。
- ・ 目配り・気配りを全体に行き届かせ、冷静に指導すること。
- 続いての講義は成田講師が行い、より授業内容に重点を置いた内容を述べた。
- ・ なぎなたを行う場は全て道場であり、日常から礼の実践をさせること。
- ・ なぎなたの危険性の周知徹底・安全確保の仕方を徹底させること。
- ・ なぎなたは自分の身を守るもの。またいだり、振り回したりしないこと。
ここから実技に移り、一川講師が段階ごとに指導を行った。足さばきをはじめ、なぎなたを持たないままでの空間打突など、生徒が自分からなぎなたを持ちたくなる工夫がされていた。その後、二人一組ですね当てのつけ方の指導方法を学び、なぎなたを持った実技へと移行した。
午後の実技はより細かい要素が盛り込まれ、繰り込みや繰り出し・気剣体一致などを、対人で行う動作の中で説明した。また、生徒に直接触れて指導するのではなく、指導者が正しいものを見せながら指導するのが理想的だとした。続いてグルーピングで分けた4つの班ごとに「リズムなぎなた」を発表し、会長や講師の先生方から講評をいただいた。
引き続いて行われた質疑応答では、中学校教員の参加者を中心に質問を述べ、講師の先生がその都度丁寧に回答していた。この後閉会式が執り行われ、事業は滞りなく終了した。