武道の振興・普及

茨城県(水戸市)地域社会柔道指導者研修会

期  間 平成22年11月27日(土)・28日(日)
場  所 茨城県武道館
参 加 者 49名
派遣講師 浅野哲男(財)全日本柔道連盟教育普及委員会副委員長、腹巻宏一和歌山県柔道連盟普及委員

概要

 土日開催だったが、49人の参加者を得た。そのうち10人は教員志望の茨城大学生、残り39人は15人の女性を含む現役保体科教員だったが、学生時代を通じても柔道経験が全く無いという者が10人ほどいた。また2日目には外部指導者志望の社会体育指導者も数人加わった。最終日全日程終了後、昇段審査を行い、初段に 19人、二段に5人、三段に1人が受審した。

参加者内訳

区分 男性 女性
保体科教員 24 15 39
茨城大学生(柔道部含む) 1 9 10
25 24 49

 受講生は全体で初心者と有段者がほぼ同数となったため、前者は赤紐を巻き、一貫して後者とペアを組んで実習。そのため実技の不明な詳細をその場で一つ一つお互いに確認しながら進めていた。
 開会式では浅野講師が「2年後に迫った必修化のため、皆さんの授業力向上を目的に行いますので、疑問や不明な点は研修の流れを止めても結構ですから聞いてください」と挨拶。
 講師は両名で全体を教え、班分けなどはしなかったが、どちらかというと浅野講師が初心者による初心者指導、腹巻講師が有段者による初心者指導に応じた内容を教え、双方の受講生に目配りした内容となった。
 浅野講師は、長く中学校の現場で教えてきた豊富な経験と知見をもとに、大所高所に立った話しから実技の細かな注意点の指摘までを行った。最初の座学では、柔道近代史、学校教育における柔道の位置、その教育的価値・役割、必修化の経緯と意味から始まり、自分なりの“武道論”をもつことや中学1・2年履修後の途絶に対する懸念から生徒の興味を惹き付ける授業内容への努力を重ねることの重要性を強調し、帯の締め方や立ち方・座り方の所作など微細なところのもつ意味、部活動と異なる正課授業の目的は「受け身を体得し日常に生かせるようになること」や「きちんと挨拶の出来るようになること」などにおいてもよいこと、また安全指導について道場の点検確認を怠らぬこと、危険な柱があれば人を立たせるなどの工夫をすることを述べ、実際の事故例の中から、熱中症になった例、技をかけた者が頭・頸から技に入って、頸椎脱臼骨折し下半身麻痺になってしまった例などを挙げ、改めて着実な指導法の習得を促し、「この先生は強くないけど、指導は巧く、従っていれば安心だ」という信頼感を生徒に持たせることも肝要だとした。また受け身の指導では、畳の線を使って手を置く位置や体の移動方法を学ばせ、「易→難」への指導原則に則り、仰向けで寝たままの姿勢から、1人で、応対で、技を絡ませてと次第に難易度を挙げ、相対で受け身と技を同時に学べるような形に持って行った。試合も無理にやらせる要は無く、技を限定する、固め技のみで行う等々の工夫を凝らすように求めた。固め技でも、身体ほぐし運動としてずり、えび、足回旋、足交差などの補強運動から入り、寝技の攻防、連係・変化の面白さを知るため全員で「世界一周」にトライした。安全指導では配付テキストを見ながら、これからは講習会を受講しないと監督になれないようになるだろうとその重要性を強調し、時間の少ない中、重点項目を中心に講義した。
 腹巻講師は、既に10年ほど地元教委の依頼で柔道非専門教員の指導を行っており、その経験・実績から、まず導入部の重要さを語り、そこが楽しいとたとえ受け身の実習が大変でも柔道の実技に繋げ易いと、体落としや足払いなどへ発展する各種の身体ほぐし運動を指導した。また受け身の指導でも、正座で相対し相手の突きを交わして、あるいは蹲踞して互いに片手を打って横に倒れるなどの工夫を披露した。固め技でも、基本を一通り講習した後、攻防の中で非力な子の対応法などを紹介し、可能性を秘めた分野であることを示した。攻防の面白さとして、大外刈りをかけられたとしても、かけた側の動作が刈り足のピークで一瞬止まるので、その瞬間横に振れば弱い子でも反撃のチャンスが生まれるなど、豊富な指導経験から「アバウトに始め、しっかり終わる」の実例を提示した。
 閉会式では浅野講師が講評に立ち、「先生が自分で出来ないことは子供に教えることも出来ない。その意味で今後の研鑚を望みます。こういう研修会で疑問をぶつけあえる仲間が出来たと考えてほしい」と述べ、受講生の労をねぎらった。
 女性受講者の1人は「専門は陸上競技です。うちの学校は柔道を選択し、畳、柔道衣皆揃ったので、次は人間の番になり参加しました。(柔道は)難しいですね」と言ったがその表情にはどこか自信が芽生えかけているように見えた。別の女性受講者は「今年小学校から異動してきました。うちの学校には3人保体科教員がいて自分は今ダンスを教えていますが、学校の規模からいうと1人が適当なので、いつそうなってもいいように勉強しに来ました。夏は文部科学省の剣道伝達講習会に参加しました。2日ではなかなか覚えられませんね」と決意も新たにした感じであった。
配付資料:
「柔道授業づくり教本」、「柔道の安全指導~事故をこうして防ごう~」、「柔道学習ノート 初級編」