鳥取県(米子市)地域社会柔道指導者研修会
期間 | 平成26年5月24日(土)・25日(日) |
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場所 | 鳥取県立武道館 |
参加者 | 51名(うち9名が中学校・高等学校の教員。柔道初心者の中学校保体科教諭は4名参加) |
派遣講師 | 平野弘幸七段(全日本柔道連盟審判委員会委員・講道館指導員) 腹巻宏一五段(柔道塾紀柔館館長・和歌山県柔道連盟理事) |
概要
1日目は中学校武道必修化を主眼とした指導法、2日目は国際柔道連盟試合審判規定の改正点について講義、実技研修が行われた。
はじめに鳥取県教育委員会・長尾愼二学校体育担当指導主事から学習指導要領改訂のねらい、武道指導のねらいについて説明がなされた。
「鳥取県内の中学校60校の採用種目は柔道45校、剣道14校、相撲1校である。安全に配慮し、発達段階に応じた指導を行うため、工夫が必要だと考えている。柔道未経験の体育教員が多いので、地元で指導実績のある外部指導者の力をお借りしたい。このような指導者研修会は貴重な機会であり、積極的に参加いただき、安全で楽しく授業を進めていただきたい」と指導者充実の必要性を訴えた。
中学校武道必修化研修は腹巻講師が担当。はじめて柔道を体験する子どもたちに柔道の楽しさを伝えるため、あきさせない工夫が必要であると、自身の柔道塾での経験を交えて指導法を伝えた。
●準備運動の考え方
準備運動はケガをしないために非常に重要であるが、単調にならないよう、生徒自身にアイデアを出させると生徒も意欲的になる。2人1組になり、遊びの要素も取り入れて、簡単な動きから徐々に効果のある体の動きを取り入れる。互いに座った状態で背中合わせになり、腕を組んで二人同時に立ち上がる、互いの呼吸をあわせる必要があり、準備運動の効果もある。
●受身の指導法・習得方法
グループに分かれての研修。柔道未経験の受講者が各グループに1名入り、経験者が未経験者に指導する形で行った。受身は非常に奥深いものであるが、受身の楽しさ、奥深さを限られた授業時間で伝えるために工夫が必要。頭を打たないということがもちろん大事であるが、日常生活で転んだときにケガをしにくいなど、受身を身に付けることが生活に役立つことを伝えるのもいいのではないか。
●投技の基本動作
ケガや事故が起きないよう十分注意が必要。指導者は常に全体に目を配らなければならない。このような形になるとケガをするというよくない例を見せることも効果がある。互いにケガをしない、させないという気持ちを意識させ、能力に応じた指導が必要。技がきれいに決まった時の爽快さは柔道の魅力でもある。相手が投げて気持ちよくなれるように受身をとるのも大事である。初心者には「体落」「大外刈」が入りやすいといわれている。技の攻防、返し技などができるようになると、柔道の楽しさが伝わるのだが、なかなか難しい。動きの中で相手の重心をずらし、技につなげていくことを意識させる。力で投げるのではないことを理解させる。
●固技の基本動作
寝技も柔道の魅力の一つである。寝技の攻防に興味を持たせるよう工夫が必要。最初は、どのように抑えたら相手が逃げられないか、逃げようとする相手を抑えるには、生徒に考えさせて、互いに工夫しながら進めていくのもひとつの方法。
●安全指導について
指導者には安全配慮義務が求められている。重大事故の陰には、小さな事故が必ずある。日頃からちょっとした危険要素を見逃すことなく、対策を考えることが大切。生徒には危険性を伝える。頭を打つ事故を防ぐことはもちろん大事だが、頭を打たなくても回転加速が加わることで脳に障害を起こす場合があるので注意が必要。熱中症対策にも配慮が必要、適宜の休憩と水分補給は不可欠。授業を行うスペースが限られている場合はグループに分けて接触事故を防止する。初心者がケガをしやすいので、経験者が初心者に配慮することが大切。
腹巻講師は、自身も稽古をしているという合気道の動きを交えて、体捌き、受身の取り方を示すなど独自の指導法も提示し、受講者も興味深く研修に取り組んだ。
「型通りの指導にこだわりすぎないのも興味を持たせるきっかけになる。初心者指導は、試合に勝つための練習ではない。指導者は柔道の魅力を子どもに伝えるため、勉強、工夫が必要。今日は自分自身も非常に勉強になった、参加者の方も今回学ばれたことをぜひ現場にいかしていただきたい」と初日の研修を締めくくった。
●国際柔道連盟審判規定の改正点・実技研修
2日目は平野講師による国際柔道連盟審判規定の講習が行われた。
国際柔道連盟は改正した審判規定を、2014年1月より施行しており、全日本柔道連盟としては新たな審判規定の国内大会への適用について審判委員会で検討し、導入することとした。
中学生以下の大会では、従来どおりの「少年大会申し合わせ事項」を取り入れて行う。
団体戦・個人戦とも大会の趣旨・内容を考慮したうえで、勝敗の決定方法や代表戦の試合方法を別に定めることは可能である。
今回の改正のポイントとして、組み合わない、偽装攻撃、防御姿勢について、これまでよりも厳しく「指導」が与えられることとなった。
平野講師は「今回の審判規程改正は、柔道の原点、しっかり組んで技をかけることに重きをおいている。『指導』は相手のポイントにならないので、少年大会等で審判する場合は、きちんと組むよう促す意味で『指導』をとってほしい。相手の反則を誘うような柔道ではなく、日頃の稽古から試合場の中央でしっかり組んで技をかける、正しい柔道をするように指導してほしい」と正しい審判が正しい柔道につながると強調した。
◇参加者の声
▽男性・社会体育指導者「難しい技の連携や崩しを、いかにやさしい言葉で伝えるかということを学びました。反復練習の前に技の仕組みを理解させることに重点をおいて指導していきたい」
▽男性・社会体育指導者「受身等初心者への教え方がよくわかった」
▽女性・中学教員(柔道未経験)「普段の生活にない動きが多く、体の使い方が難しい。柔道のおもしろさを伝えるためには、ケガをさせないように十分な安全面の配慮が必要。運動をまったくしていない人に教えるための動きの練習を考える必要がある。相手がいての動作が多いため、2人で呼吸を合わせ、声を出しながら練習すること。見本を見せるだけでなく、動きのポイントを伝えることが大事だと思った」
▽女性・中学教員(柔道未経験)「柔道にマイナスイメージをもっている女子が多いので、生徒たちを楽しませるための指導方法を勉強する必要がある。グループに分かれて、経験者の方からアドバイスをいただき、自分が指導するときにも役に立つと思った」
▽女性・中学教員(柔道未経験)「受身にも様々な指導法があることを知り勉強になった。流れの中で技を覚えていくとわかりやすかったので、生徒にも伝えていこうと思った」
▽女性・中学校教員(柔道未経験)「前回り受身の方法など授業で役立つことが得られた」
準備運動。あきさせない工夫が必要
2人1組で転がり方を互いにチェック
固技の基本動作
経験者が初心者を指導
正しい受身は日常生活にも役立つ
合気道の技を取り入れて
投技は習熟度にあわせて指導つ
指導者は周りに目を配り危険な状況を見逃さない
審判規程の改正点をDVDで研修
場外の判定に関して受講者から質問が相次いだ